作家の時代の終わり

今回のお話は、読書離れとかワープロ原稿とかそういうはなしではありません。

作家というものが活躍する時代は終わったと感じる、そういうはなしです。

作家は、明治の終わりから平成半ばまでその存在自体が巨大なものでした。

発言力があり、その作品は広く読まれてその国や世界の人びとを感動させました。

しかし、平成後半から現代にかけて、作家という存在はあまり重宝されなくなりました。

読書する人は減り、売れる本の数も目に見えて減り、出版社がいくつもの雑誌を休刊にしたりしました。

つぶれた会社もあったかもしれません。

もはやほとんど儀礼的に、芥川賞直木賞が毎年2回も発表され、前回の受賞者の名前を言える人はどれくらいいるでしょう。

これから小説を書いていこうとする人、詩を書いていこうとする人は、文を書いているだけでは生きていけません。

自らがコンテンツにならないといけないのです。

自分も商材。

文章の魅力、売れた本のお金だけで生活してゆけるという環境はなくなってしまいました。

SNSの登場がその一端を担っているのは確かでしょう。

よく言えば、作家と読者の距離が短くなりました。

しかしそれは、作家という存在の重さを軽くしました。

悪いことではないのかもしれません。

それでも、もはや作家の時代は変わったのです。

昭和のころの作家と、現代の小説家や詩人は同じ肩書きであっても違う存在だと言っていいでしょう。

優れた文章が書かれれば売れる、読まれる。

そういう幸せな時代は終わりました。

もちろん、作家という職業がなくなることはないでしょう。

ですが、徐々に変容してゆくのは確かです。

この流れは変えようがありません。

約100年間、作家という仕事は続きました。

もうそろそろ、終わりなのではないか。

そういうお話。