オーケストラはフルマラソン

これを読んでいただいている人の中で、コンサートに出演したことのある方はいらっしゃるでしょうか。

わたしはアマチュアオーケストラの演奏会に出演したことがあり、そのときのことを思い出すとずいぶん頑張ったものだなあと思います。

演奏会、それもオーケストラというのは体力勝負です。

個人的な意見ですが、演奏がうまいけれど体力がない、という人よりは、演奏はそこそこだけど体力抜群だという人の方がオーケストラには向いていると思います。

そもそもが、音楽というのは相当なスポーツだと思うのです。

わたしはオケをどう説明したら理解してもらいやすいか考えた事があるのですが、なかなか伝わらない。

オケの音楽というのは、わたしなりに説明すると「基本的な演奏技術」「演奏するための体力」「表現するための思考と技術」「他のパートと合奏する連携力」が必要です。

これを1文で言おうとするのなら、「マラソンをしながら計算をして、絵本の読み聞かせをするようなもの」と表せばいいでしょうか。

わたしは非経験者にこれを言ってみたのですが、反応がイマイチだったという経歴があります。

伝わりづらかったでしょうか……。

でも、事実そうなのです。

ラソンは体力のこと、計算というのは表現のこともありますが、西洋音楽は数学的でもあるということを指しています。

具体的に言うと、クラシック曲は拍子に対して厳密に音符の数が決まっており、ある小節の途中から3小節と2拍休んでまた弾き始める、というような「今自分が弾くべきところはどこか」ということを正確に数えるのです。

ミスったら最期、曲の崩壊です。

これが頭を使うのです。

他のパートの音や指揮者の棒を頼りにしながら数えるのですが、とにかく膨大な音符の量ですから全体で何度弾くべきところ、休むところを数えるわけです。

絵本の読み聞かせ、というのは表現のことです。

クラシック音楽には言葉がありませんが、やりようによって言葉よりも雄弁に感情を表すことができます。

それだけ可能性があるといえばいいのですが、可能性があるがゆえに突き詰めようとするとこれがキリがない。

なんとなく感覚をつかんでいただけたでしょうか。

本当に大変なんですよ。

やりきった後は快感もあるのですが、つらいものです。

演奏会が1時間45分だとすれば、たったそれだけの時間のためにアマチュアは1年とかを費やしてなんとか練習をするんです。

ラソンみたいだと、思われませんか?